「わたしたち雪の精はこの寒い季節にしか生きられないから、もし人の里に行ったら暑さで溶けて消えちゃうかもしれないって話でしょ?」
氷雪から何回も聞かされたんだもん。
ちゃんと分かってるよ。
「それだけじゃないぞ。もし人と触れあうようなことになっても、その体温で僕たちは消えてしまう。
もし人がいたら見つからないようにしなくちゃならないし、他にも人の里には危険が……」
「もぉ、分かってるってば〜。とにかく人に触らなかったらいいんでしょ?
というかわたしたちを見ることができるなんて珍しい人はそんなにいないから大丈夫だって」
氷雪は心配しすぎ!
わたしだって子供じゃないんだから!!
「じゃあ行ってくるね!
お土産話、楽しみにしてて」
「おいっ、淡雪!!」
まだ心配そうな顔をしている氷雪を置いて、わたしは一人、山を下りて行った。
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山を下りて道を歩く。
「うーん……思っていたよりも雪が少ないなぁ」
確かに、わたしたちにとってはあまりよくない環境だね。
うーん……無理はしないようにしないと。
わたしだって消えちゃうのは嫌だもん。
周りに注意を払いながら進んでいく。
山の中よりも動くのが辛い気もしたけど、わたしは初めて里に来たことが嬉しくて、あまり気にならなかった。
「さっきから歩いてるけど、人なんて誰もいないじゃん」
山道から普通の道になっても、人どころか何も通らない。
氷雪、やっぱり心配のしすぎだな。
生き物がいないのに、人なんて尚更だよ。
んー……でも会ってみたかったなぁ。


