淡雪の恋




「無理するなって言ったのに」


「…ごめん、なさい」



呆れたような声とは裏腹に、その顔や手つきはすごく優しい。


ひんやりと気持ちがいい氷雪の手がわたしの頭を撫でる。



「氷雪にこうやってされると、体がラクになる気がする……」



思わず気持ちよくなって目を瞑る。



さっきまで体が重くて息ができなくて、苦しくて堪らなかったのに…


氷雪が撫でる度、体の重みがすぅっと消えていくみたい。



「淡雪のその姿を見ると…想像してたより下はもう春みたいだな」


「そう、みたい」



だいぶ体がラクになったので、わたしは体を起こした。



「淡雪、大丈夫?」


「ん、大丈夫」



笑顔を浮かべると氷雪も安心したように笑った。



「淡雪、今日何かあったのか?」


「え……」


「元気ないぞ?」



少しイタズラな笑みを浮かべる氷雪。



「……氷雪には分かっちゃうんだ」


「淡雪のことなら」



なんでもな、と最後に氷雪は小さく呟く。



氷雪もわたしと一緒だったんだね。


わたしも氷雪のことなら分かるもん。



……言おう、かな。


誰かに、ううん…氷雪に聞いて欲しい。


聞いてもらって何がしたいとかは分からないけど……



「春が…明日、運命の人に自分の気持ち言うんだって」



氷雪は何も言わない。


こういうときは黙って聞いてくれる。


優しい氷雪……わたし、氷雪に頼ってばかりだなぁ。



「春、そのときすごく優しい顔してた。
きっと春はまだその人のことが好きなんだろうなぁ……」



まだ覚えてる、春の優しい笑顔。



「わたし、失恋だぁ」



えへへ、と笑うけど氷雪は悲しみと少し怒ったような複雑そうな顔をした。



「氷雪……どうし」


「淡雪はさ、いいの?」


「え……?」