「恋…?」
「恋」
………え。
「そ、それって俗に言うあの恋?鯉じゃなくて?」
「何、鯉ってベタすぎ。淡雪慌てすぎでしょ」
ははっ、と氷雪は笑うけど、わたしとしてはそんなに楽観視もできませんよ。
わたし、春のこと好きなの?
ラブなの?
ライクじゃなくて?
………わたし、春に、恋してるの?
トクン、トクンと胸の音が大きくなる。
春のことを考えるとき、春と会うとき、春と話すとき……
春の、笑顔を見るとき……
すとん、と欠けていた何かが自然に胸に落ちるような、すぅっと溶けていくような、そんな感覚がした。
「そっか……わたし、春が好きなんだ」
口に出せばもっと自覚する。
わたし、春が好き……春に、恋してるんだ。
「気づくの遅すぎ」
コツン、と氷雪はわたしのおでこにこぶしを当てた。
「ありがとう、氷雪。わたしの気持ち、教えてくれて」
「淡雪が気づくの遅いだけ」
「あー、ひどぉーい!」
あははっ、と二人で思いっきり笑いあった。
確かに、わたしが消えちゃうって考えると胸のあたりがモヤモヤする。
けど氷雪のおかげでさっきよりもずっとラクな気持ちになった。
まだ、時間はあるから。
今は、何も考えないように……
「淡雪、そろそろ寝ようか」
「うん、そうだね」
氷雪と話していて、いつの間にかだいぶ時間が経っていた。
「淡雪」
「なぁに?」
「今日は、一緒に寝ようか?」
優しい、それでいて寂しそうな瞳……
氷雪は優しいから、多分わたしのこと心配してくれてるんだよね…
「うん!一緒に寝よっか」
そう言うと氷雪はわたしに向かって優しく笑ってくれた。
その日、わたしは氷雪の腕の中で安心に包まれて眠った。
春のことを考えながら……


