淡雪の恋





春……春………


いつから、こんなに春のことが大切に、特別になってたんだろうね。


知らないうちに、積もってた思い。



「氷雪……ありがとう。ちょっとだけすっきりした。濡らしてごめんね」


「気にしなくていいって言っただろ?」


「うん…ありがとう」



わたしは氷雪からそっと離れた。


こんなに思いっきり泣いたのは初めてで……なんだか氷雪にどういう顔をすればいいのか分からない。


しばらく俯いていると氷雪にぽん、と頭をなでられた。



「淡雪……好きだ」


「え…?」



すき……?



ばっと顔をあげるとすごく優しく、寂しそうに氷雪は微笑んでいた。


わたしが今まで見た中で一番綺麗な微笑み。



「ひょ、氷雪…?」



それって、どういう……



「好きって言ってみな?」


「……は?」


「だから、好きって言ってみな?」



……意味が分からない。


どうしていきなりそうなるの?



「ほーら、はやく」



何故か氷雪がわたしを急かす。


い、意味は分からないけど、とりあえず言ってみようかな。



「す、すき……?」


「もっと」


「すき……」


「もっと」


「すき…すき……好き……」



あれ……どうしてだろう?


今、春の顔が浮かんだ。



「今、好きって言って何が浮かんだ?」


「……春の、顔」



わたしの大好きな、春の笑顔。



「淡雪、それが淡雪の気持ちだよ」


「わたしの、気持ち?」


「うん」



わたしは真っ直ぐに氷雪を見つめた。


その言葉の意味をはっきりと知りたくて。



「淡雪は、その春くんのことが好きなんだ。恋してるんだよ」


「え……」



こい……恋………?