ふいにひんやりとしたものに包まれる。
氷雪に抱きしめられたんだ、とわたしは自然に分かった。
「ひょ、うせつ……濡れ、ちゃうよっ…」
「そんなの気にしなくていいよ」
ぎゅうっと少しだけ抱きしめられる力が強くなった。
「淡雪。淡雪の今の気持ちを、僕に教えて。
思ってること全部。僕が受け止めるから」
ぽんぽんとわたしを安心させるように氷雪はわたしの背中を軽くたたく。
あぁ……この手、懐かしいな。
昔はよくこうしてもらってた。
「あの、ね……わたしね…」
「うん」
氷雪の背中を撫でる手にわたしはひどく安心して、自分の気持ちを言っていた。
「ちゃんと、分かってるの……わたしたちは、いつか消えちゃうって」
「うん」
「理解も、納得も、してたの」
「うん…」
「でも、山をおりて、春と出会って、いろいろなことを知ったの」
「うん…」
本当に、いろいろなことを春から教えてもらった。
ブランコ、帽子、バレンタイン……他にもたくさん。
「春のこと、たくさん知ったの……」
「……」
「春はね、優しくて、かっこよくて……笑顔が綺麗なの。
不機嫌そうな顔も、拗ねたような顔も、照れた顔も……いろいろ知ってる」
今まで春と過ごしてきた日々が溢れてくる。
わたしの、春への思いも……
気づかなかったけど、いつの間にかたくさんになってた。
毎日、毎日……雪みたいに、ふわふわ思い出が、思いが積もっていってた。
「まだ、消えたくない……まだ、春と一緒にいたいよ」
そう小さく呟いてから、わあぁっ、とわたしは氷雪の胸で思いっきり泣いた。
氷雪は何も言わずに、ただ、わたしが泣き止むまでずっと抱きしめてくれていた。


