淡雪の恋




春の笑顔を見つめていると一つのアイディアが頭の中に浮かぶ。



「春っ、帽子被って!」


「え、被るの禁止じゃなかったっけ」


「いいからー、はやく!」


「分かったって」



春は訝しげな顔をしながらも帽子を被ってくれた。


こういうところ優しいんだよね。



「被ったよ。で、何するの?」


「えへへ」



ぴょん、とわたしはブランコからおりて春の前に立つ。


不思議そうな春の瞳にわたしが写った。



トクン…トクン……



音が鳴る胸には気づかないフリをして、わたしは春に手を伸ばした。


そして帽子の上、春の頭の上に手をのせた。



「え、ちょっと、淡雪!?」


「あ、やっぱりー!こうやってすれば直接に肌が触れないから触れると思ったんだ」



よしよしとわたしは春の頭を撫でた。



「前に話したよね、ここで。運命の人の話。
あのときの春、すごく寂しそうだったから、こうやって慰めてあげたかったの」



春は黙ってわたしの話を聞いていた。


わたしが春を見下ろす形だから、わたしのところからは春の顔が見れない。



春……春は今、どんな顔をしているのかな。



「あのときは頭を撫でることできなかったから、春のこと慰めてあげることができなかった。
だから、今日はできてよかった。
あ、さすがにぎゅうはできないけどね」



えへへ、とわたしはおどけて笑ってみせた。



「春……大丈夫だよ。大丈夫……きっとまた春の運命の人に会えるからね。
今は辛くて苦しくて、どうしようもなくても大丈夫。わたしが慰めてあげるから」



よしよしとわたしは春の頭を撫で続ける。



「淡雪……」


「なぁに?」


「ありがとな」



呟くような小さな声だったけど、その言葉ははっきりと聞こえて、わたしの心の中に入っていった。



「どういたしまして」



ふんわり、心が白いもので満たされていく。



その日はあまり会話はしなかったけど、今までで一番、春の近くにいれたような気がした。