淡雪の恋




「帽子って言うの」


「ぼうし?へぇー」



春からぼうしを受け取って手の中でくるくると回してみる。



「でも、これって被ってどうするの?」



いつも見る度に思うんだよね。


だってイマイチどんな効果があるのか、とか分からないし。



「貸して」



春に言われてわたしはぼうしを渡した。



「こうすれば、顔見れないだろ?」



そう言いながら春はぼうしを被った。



「おぉ、なるほど」



顔を隠す道具なのか。



「ほんとはこうやって使うんじゃないけどな」


「え、そうなの?」



あれ、じゃあほんとの使い道ってなんだろう?



「ま、今はとりあえずこうやって顔を隠して、チョコ持ってくる女子から逃げてるってわけ」


「へぇー」



顔を隠してまで逃げるって…そんなに嫌なんだ。



「帽子……わたしはあんまりこれ好きじゃないなぁ」


「なんで?」


「だってわたしまで春の顔見れない」



わたしは春の顔、というか春の笑顔が好きなのに。



「だからわたしの前では帽子はやめてね」


「ふはっ、了解」



どうして今笑ったんだ。


むぅ、と頬を膨らませると更に春に笑われた。



なんだよぉ。


もう!春のばかっ!!



プイッと春から目をそらしてわたしはブランコを思いっきり漕いだ。


冷たい空気がわたしの体を包む。



「怒ってる?」


「怒ってないもん」



ちょっと拗ねてるだけだもん。


そう言うとまた笑われてしまった。




最近、春の笑顔をみると、朝日みたいな暖かい光がわたしの中を満たすような、そんな感じがする。


これがなんの気持ちなのか……よく分からないけど。



嫌、ではないだよね。


むしろ心地いいというか、安心するというか……


だからいっそのこと分からなくてもいいや、なんてね。