すっと、自然に春の手がわたしに向かって伸びた。
触れられたら、わたしは溶けてしまう。
分かってるのに……
それでも、避けられない。
違う。
避けたくない……
「……っ、」
ぼーっとして春を見ていると、春がびくっと肩を震わせて、わたしから手を引いた。
「ごめん……」
「あ、ううん。別に…」
春の一言でわたしもはっと我に返った。
わたし、何してたんだろう。
さっき、どうして春を避けられなかったの?
避けなかったの?
分からない……
「ケータイ鳴ったっぽい。バイブにしてたからびっくりした」
春はケータイを取り出してどこかにメールをしているみたい。
誰にしているんだろう……友達、かな?
わたしは立ち上がってひざに付いた土を払った。
「淡雪、そろそろ帰る時間だろ?」
「う、うん」
こくり、と頭を縦に振る。
メールは終わったのかな?
「途中まで送るよ。さすがに山の中までは行けないけどな」
「え?」
今まで、春そんなこと一度も言わなかったのに……
「行くぞ」
「あ、待ってよ!」
わたしは先に歩いて行った春の背中を追いかけた。
なんか、嬉しいな。
こうやって一緒に帰るとか、普通っぽくて。
春の隣を歩くとか、ヘンな感じ……
「何笑ってるの?」
「んー?別に?」
ふふっ、と自然と笑みがこぼれる。
「淡雪はさ、山?の中では何してるの?」
「んー……特別なことは別にないよ。お話したり、景色を見たり……寝たり?」
春がわたしのことを聞くなんて……やっぱり今日の春はヘンだな。
わたしもだけど……


