「春ー?」
そっと声をかけてみるけど反応がない。
そ、そんなに嫌だったのか……
「春、怒ってるの?」
「……や、怒ってるとかじゃないけど」
「けど?」
……春がヘンだ。
なんというか…焦ってる?
うん。春のこんな姿、珍しいと思う。
そう思うと顔を見たくなるのも自然な流れなわけで……
「はーるっ?」
わたしはちょこん、と春の前に座って顔を見上げた。
「え……」
「ぅわ……今見ないで」
春はそう言って手で顔を隠した。
……春、顔、真っ赤だ。
なんか、かわいい。
「春ー、顔赤いよー?」
「気のせいだから」
「うそだー!照れてるんでしょ?」
何に照れてるのかは知らないけど。
「…違う」
少しむすっ、とした表情が手の間から見える。
それがいつもの春と違ってすごく子供っぽく見えた。
「あははっ、春かわいいー!……あ」
つい、心の声が漏れてしまった……
「ふーん……かわいい、か…」
「え、と……春?」
さっきまでの表情とは丸っきり変わって、春は少し不機嫌そう。
わたし、何かよろしくないこと言ったかな?
「淡雪」
「は、はいっ」
真剣な色を浮かべた春の瞳がわたしを捉えた。
トクン…トクン……
な、に……?
ただ、見つめられてるだけなのに……
トクン…トクン……
なんか、わたしヘンだ。
今までだって、こうやって、見つめられたこと、あるのに。
トクン…トクン……
目が離せない。
春の綺麗な瞳に、吸い込まれそうになる。


