淡雪の恋




「ここに来た理由だっけ?
そうだな……もともと家から近いから小さい時からよくここには来てたんだよ。
だからかな…何かあったときとかはよくここに来るんだ」



春は少し遠くを見ながら言葉を紡ぐ。


わたしは春の言葉を聞きながら黙ってその横顔を見つめていた。



「淡雪と会ったあの日……ちょっと失恋してさ、気がついたらここに足が向いてた」



だから深い意味があってここに来たわけじゃないんだ、と言って春は笑う。



「春……」



わたし、なんて言えばいいんだろう。



分からない……


春にかける言葉を見つけられない自分に少し腹が立つ。



どうしていいか分からなくて、あたふたしていたわたしに春は目を向けて少し寂しそうに笑った。



「運命の人だと思ったんだけどな」




運命の、人……?



聞きなれない言葉に少し疑問を持つ。



「運命って分かるか?」



春の言葉にわたしは首を振る。



「そっか……運命っていうのは、そうなるって最初から決まっていること、かな。必然とも言うな」


「最初から、決まっていること……」


「そう。だから運命の人っていうのは、初めからこの人のこと好きになって、この人と一緒に人生を歩いて行くんだ、って思える人」


「…………」



春には、そんな風に思えるぐらい好きな人がいるんだね。



……それって、すっごく素敵なことだと思う。


なのに、少しだけ…ほんの少しだけ、胸の奥のところがチクってした。


細いつららが刺さったみたいな……




「淡雪?どうした?」


「、え?」



はっとして春を見ると春は心配そうな顔をしてわたしを見ていた。



「何度読んでも返事しないし……体調でも悪いのか?」


「な、なんでもないよ」


「そうか?ならいいけど」



微笑んだ春につられてわたしも笑顔になる。


あれ……さっきの気のせいかな?


もう全然痛くない。