太陽は南天を越えたけれど依然として高くある。頭上から熱が降ってくる。時間の経過とともに影が移動し、プールは影の中ぎりぎりだ。
あの赤いギンガムチェックのワンピースが効力を発揮してしまうだろうことが、どうしてか頭から離れない。
実の母親と義理の父親といるよりはマシなのだろう。そして施設で暮らすよりも、例え血が繋がっていなくても、優しい夫婦の元で暮らす方が良いだろう。ただあたしは、利乃ちゃんが「知らない」ことが気にかかる。「知らない」から、彼女はまだ「家族」に絶望していない。
何も知らないうちに客観的幸福の方へ導かれるのは、果たしていいことなのか。
「少し焼けたんじゃないか。」
「そう?」
「うん。あとふっくらした。」
「太ったってこと?」
「以前と比べれば、な。体型が太いってことじゃなくて、健康的に成長したなってことだ。」
あたしは別に気にしていないのに、センセイは取り繕うような言い方をした。それがなんだか微笑ましいと思ってしまう。
前に、痩せ過ぎだからもう少し食べろ、と言われたことを思い出す。
三度の食事と安定した睡眠が継続的に取れるようになって、確かにあたしの身体には脂肪がついてきた。痣も薄くなって、しぼんでいた肌が膨れてきた。それは決して、嫌な変化ではなかった。

