ステップ・ブルー


「ざんねんだね。」

「うん。でもぼく、あおがいちばんすき。」

「りのちゃんはぴんくとあか。」


利乃ちゃんはあまり人見知りをしないようで、お客さんに次々話しかけている。あたしがほぼ喋らないので助かっている。

センセイはと言えば。僕も店番手伝うよ、なんて言っていたくせに、開始から一時間もしないうちにどこかへ消えてしまった。園庭にも姿は見えない。


「おなかすいた。」


男の子に手を振った利乃ちゃんがぼそっと呟いた。

それもそうだろう。市内に流れるお昼のチャイムが鳴ったのが十五分程前。朝食を食べてから約五時間が経っているのだ、無理もない。しかも、そこかしこに食欲をそそる匂いが漂う。

宮野さんからもヨーヨー売り場をお願い、と言われただけで休憩や交代のことは何も聞かされていなかった。いつまで店番をしていればいいのか。かろうじて建物の日陰に場所を取っているけれど、貰ったペットボトルのジュースはもう半分もない。暑い。


「利乃ちゃん、ここで待ってられる?お昼ご飯のこと訊いてくる。」

「うん。」


しびれを切らして立ち上がったところで、センセイが片手を上げてこちらに駆けて来た。


「お疲れ様。これ、二人のお昼ご飯。」


センセイが差し出したビニール袋を受け取る。中身はパックに入った焼きそばとお茶の缶。