「ふかふかしてきたねー。」

「ねー。すごいね。」


無邪気な笑顔の向こうでたくさんの人が園内に入ってくる。皆腕章を付けている。ボランティアの人たちだ。常駐している職員だけでは人手が足らないので、市からボランティアが派遣されると宮野さんが言っていた。開始の十一時まであと一時間半、準備も大詰めだ。

この地域交流会には主な目的が二つある。施設での初めてのイベントを迎えるあたしに、宮野さんが教えてくれたこと。

一つ目は、その名の通り地域住民と交流を図ることだ。施設にいる子は当然何かしらの問題を抱えている。充分でない家庭環境で育った子には異常がある、という偏見を持つ人は少なくないそうだ。家庭に問題があることと子どもに異常があることは必ずしも一致しないのに、そういう目で見られてしまう。実際に親の悪影響で本人が歪んでしまう場合もあるから難しいところだけれど。

あたしもそう見られていることだろう。

それから、施設というのは孤立かつ閉鎖した場所になりがちである。だから、こうして年に数回夏祭りやバザーと称して地域交流会を催すのだ。オープンな場であり、施設にいる子も普通の子であることをアピールするために。地域に溶け込み、施設にいるあたしたちに自分たちは地域住民と同じコミュニティに属していることを実感させる。もちろん利益があれば施設の運営費に回すことが出来るが、資金調達は本来の目的ではない。少なくともこの施設では。