八月に入り太陽はよりぎらぎらと勢いを増した。
連日猛暑日と熱帯夜が続き、うだるような暑さに日々体力と気力を奪われる。施設内にも皆のうんざりした空気が流れている。昼食は毎日のように冷麦かうどんだが、誰からも文句は出ない。他の物を出されたところで食べられる気がしないからだ。
しかし、八月第一週の土曜日。本日は少し違う。今日明日は施設で地域交流会という名目の夏祭りなのだ。
昨日の夕方から職員と入居者総動員で準備を始め、園庭も館内もカラフルな色どりで満ちている。中学生以上は面倒臭さを隠しもしないが、それでも退屈な日常に飛び込んできたイベントを手伝っている。
あたしも。こんなの心底面倒なのだが、純粋に楽しんでいる利乃ちゃんに引っ張られる格好で、園庭の隅で水ヨーヨーを浮かべるプールを膨らませている。
「ふくらまないねえ。」
「そうだね。」
利乃ちゃんが両手でポンプを押す度に空気が入っているはずなのだが、プールはくしゃくしゃのまま。汗だけが滲んでゆく。
「交代するよ。」
「うん!」
ジャンプしてポニーテールが跳ねる。大きなリボンの髪飾りがくっついている。服もリボンの色と合わせた赤いギンガムチェックのワンピース、よそゆきだ。