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「あ、ゆのちゃん!」
宿題を終えて外に出ると、利乃ちゃんが半袖短パン姿でスコップを握っていた。毎日のように外で遊んでいるらしい彼女は、このところみるみる日焼けをしている。
周辺でも子どもたちがめいめいに駆け回っていた。真上からじりじり降り注ぐ太陽の熱は、彼らには関係ないらしい。
「ゆのちゃん、みてみて。おだんごつくった。」
「本当だ。」
「あげる。」
「ありがとう。」
目の前に置かれたのは、歪な形の大きな泥団子。利乃ちゃんは新たに二つ目の泥団子を作ろうとしていて、小さな手に溢れる泥を真剣に丸めている。
あたしも、このくらいの時はこうして遊んでいたっけ。懐かしい。あの頃は何も考えていなかった。その一瞬一瞬で頭がいっぱいで、目の前が全てだった。感情を遮るものはなくて、行動を制限するものもなくて。
泥だらけになってみるのも、悪くないのかもしれない。
「ゆのちゃんもつくろ?」
「うん。」
腕を捲る。赤くぷっくりと平行な幾本もの線が露わになる。
最近切っていない。殴られることも蹴られることもないから、切る理由がなくなっていた。僅かに、ほんの僅か線は薄くなった。新しい線もない。
傍にあったじょうろで砂に水を掛けてに取る。ひんやりとした泥が気持ちいい。
「いっぱいつくってー、おだんごやさんしよう。」
「そうだね。」
あたしは少しずつ、変わっているのかも、しれない。

