* * * * *
宿題がもうすぐ終わりそうな時、宮野さんが部屋までやって来た。
「利乃ちゃんと遊ぶ約束したの?」
「うん、まあ。」
知られると気恥ずかしい。あたしは小さい子と遊んであげるような面倒見のいい人ではないし、宮野さんだってそう思っているだろう。
「利乃ちゃんが宿題終わったか聞いてきてってうるさくて。すごく楽しみにしてるみたい。」
「そうなんだ。」
中学生以上の個室は二階にあり、小学生以下は二階へ行くことが許されていない。だから宮野さんに頼んだのだろう。時刻はまもなく十時半になるところだった。
窓の向こうには真っ青な空が広がっている。気温も高そうだ。
「宿題はどう?」
「あとちょっと。」
「そう伝えておくね。もう砂場にいて待ってるの。」
「うん。」
宮野さんが部屋を出て行こうとしたので、手元のプリントに目を落とす。一次方程式があと五問。さっさと解いてしまおう。
「結乃ちゃん。」
「ん?」
もう去ったと思っていた宮野さんがドアの隙間から覗いていた。
「ありがとうね。」
優しい微笑み。そしてドアが閉められた。
ありがとう、だって。何もしていないのに変なの。利乃ちゃんだって、あたしと遊ぶことを楽しみにしているなんて、変なの。

