「いただきます。」
よじ登るように子ども椅子に座って、きちんと手を合わせている。そしてフォークを使って卵焼きを食べ始めた。
「りのちゃん、たまごやきすきなの。」
「そっか。」
「ゆのちゃんは?」
「好きだよ。」
「おんなじだ。」
また嬉しそうに白い歯を見せて、口いっぱいに卵焼きを頬張った。
親と引き離されてここに来たのだろうに、彼女はそんな欠片は微塵も出さない。何もわかっていないからだ、と言ってしまえばそれまでだけれど。辛い思いをしてきたことは、身体中に残る傷痕が証明している。
「ゆのちゃんは、きょうなにする?」
「宿題。」
「しゅくだい?てなに?」
「勉強だよ。」
「りのちゃんもいっしょにしていい?」
「うーん、一緒には出来ないかな。」
「そっかあ。」
悲しそうに首を下げてミニトマトにフォークを刺した。しかし赤くつるりとした表面はフォークの先を弾き、ミニトマトはテーブルの上をころころと転がった。
手を伸ばしてそれを摘まんで利乃ちゃんの皿に戻した。
「……宿題終わったら、一緒に遊ぼうか。」
「うん!すなあそびする!」
表情がくるりと変わって満面の笑顔になった。あたしのたった一言で。
どうして遊ぼうなんて誘ってしまったのだろう。悲しそうな顔につい口が滑った。今までのあたしなら絶対こんなことは言わなかったのに。

