「ゆのちゃん?」
突然、幼い声があたしの名を呼んだ。そして、ぱたぱたと駆ける足音の後に、五歳くらいの女の子が目の前に現れた。
「おねえちゃん、ゆのちゃん?」
耳の上で二つに結った髪には向日葵の髪飾りが付いている。ピンク色のTシャツから覗く腕とデニムのスカートから伸びる細い脚には、痛々しい傷痕がくっきりと残っている。
その女の子はぺたんとお尻をついて座ると、もう一度同じ質問をした。
「ゆのちゃんなの?」
「そうだけど。」
無視することも出来ずに返事をした。すると、女の子はきらきら目を輝かせて声を上げた。
「りのちゃんのいもうとと、おんなじだ。」
「そうなんだ。」
りのちゃん?妹?意味がわからなかったけれど、とりあえず頷いておいた。
「じゃあね、ゆのちゃん、またね。」
「うん。」
満足そうににっこり笑ってブロック遊びの輪に戻っていって安心する。見知らぬ小さな子の相手などしたことがないから、どう接すればいいのかわからなくて困る。
ここにはあたしと同じように親から暴力を受けた子も多いだろう。おそらく皆隠しているので、誰が肉体的虐待の被害者であるかは見た目では判断出来ない。初めて、他の子の傷痕を目の当たりにした。煙草を押し付けられたかのような火傷の痕もあった。
あんなに小さな女の子なのに、小さな身体なのに。心が、痛んだ。

