夏休みと言えば、寝坊で始まり夜更かしで終わる。しかし施設での生活に長期休暇は関係ない。朝食の時間は七時からと決まっていて、起床しなくても起こされる。朝早く起きるから夜も零時前には眠る。お手本のような規則正しい生活だ。

施設内でエアコンが設置されているのは食堂と談話室のみ。各個室には扇風機しかない。談話室と言うのは十畳程にマットが敷いてあって、テレビとおもちゃと数個のローテーブルがあるだけのシンプルな空間だ。デパートのキッズスペースなんかに雰囲気が似ている。

今日は午後から学校に行くので、午前中は談話室で思い切り涼むことにした。長袖のカットソーとハーフパンツを身に付け、未就学児たちが遊んでいる場所を避けて、ごろんと寝転ぶ。


「結乃ちゃん、今日学校は午後からだっけ?」


小さな子たちと一緒にブロック遊びをしていた宮野さんが話しかけてきた。職員は何人かいるが、あたしは宮野さんと関わることが多い。


「うん。」

「冷蔵庫にあるスポーツドリンク持って行ってね。熱中症にならないように。」

「うん。」


テレビにはニュース番組が流れている。右上の天気予報に三十五度とあるのを見て、これから学校に向かう道のりを思い浮かべうんざりした。