「よし。じゃあ受験したくなった時のために、とりあえず勉強を始めよう。」

「え。」


ひとりで楽しそうに言うと、先程のプリントの山を机に広げ始めた。


「各教科の先生と交渉してきた。本来なら三年生には夏休みの宿題はないけど、特別に課題を用意して貰ったんだ。」

「なんでわざわざ。勉強なら適当に問題集でもやればいいんじゃないの。」


国語、社会、理解、英語。保健や音楽まである。左上をホッチキスで留められたプリントの束は少なく見積もっても各三十枚はある。気の遠くなるような量だ。


「受験には当日の試験の点数の他に、内申点が必要なのは知っているか?」

「内申点?」

「簡単に説明すると、浮田の学校での成績や態度のことだ。」

「じゃあ全然だめじゃん。」


そんなのが必要だなんて知らなかった。きっと三年生は断続的に受験や進路の話を聞いていたのだろう。あたしは何も知らない。