「まあ、それも理由のひとつではあるけど。」
しかし、センセイは違った。
「君は今まで体育祭とか修学旅行とか、ひとつも学校行事に参加していないだろう。学生時代にしか出来ないことがたくさんあって、それをやるチャンスがあるなら経験してほしい。」
心臓がひりひりと震え始める。
安っぽい理由を述べられたなら即座に反論する準備はしていたのに、そうじゃない。だんだん目が合わせられなくなる。
「部活をやったり、友達と騒いだり、放課後に寄り道をしてみたりさ、十四歳はもっと自由でわがままでいいんだ。」
金髪が揺れる。シャツ越しに赤い線をひとつずつ撫でる。
自由。そんな曖昧なものどこにあるというの。わがまま。あたしにも許されるというの。
「どうだ?ゆっくりでいいから考えてみないか?」
「……わかった。」
気持ちの強さに気圧されて頷いた。
まさかそんなことを思っていたなんて。普通の中学校生活を送らなかったことに未練がないと言えば嘘になる。両親が離婚しなかったら、アイツが暴力を振るわなかったら、あの噂がなかったら、あたしは平穏に過ごせていたのに。恨みたくなる日もあった。
あたしが、高校生。今のあたしにはお姫様になるのと同じくらい突飛もないことだ。

