「今の施設には高校卒業までいられるんだぞ。」
しばしの沈黙の後、重い口を開いた。賛成されないことは承知だ。センセイはきっと、夢や希望を語るだろう。
「わかってる。でも現実的に考えて高校は無理。働く。」
「浮田。」
真っ直ぐな目で射抜かれる。背筋が伸びた。
中卒で選べる職種の狭さや給料の低さを唱えられるのだろうか。それとも高卒の有利さを説かれるのか。
「どうして端から高校を選択肢に入れないんだ?もし学力を心配しているなら、僕が付きっきりで教えるから。費用だってお父さんに掛け合ってみるし、奨学金だってあるからどうにかしてみせる。」
「なんで?なんで高校行けって言うの?高校くらいは出ないとダメだとか、まともな仕事に就けないとか、つまんないこと言うつもり?」
高校を卒業しないリスクはあたしなりに理解しているつもりだ。いくら学歴で人の善し悪しは決まらないとは言っても、学歴で人を判断する奴は大勢いる。それでも行く気はないのだ。深く考えずに高校に行かないと宣言しているのだと思っているのなら、あたしを舐めすぎだ。