「今日は進路の話をしよう。」


進路。いつまでも中学生ではいられない。義務教育はあと半年余りで終わる。そこから先はどんな形であれ、自分で決断しなくてはならないのだ。


「受験まで残り半年を切っているんだから、時間はないぞ。」

「高校には行かない。」


ずっと決めていた。中学を卒業したらひとりで暮らすのだ。働けるようになったら自立して自分のことは自分でやる。そもそも勉強を全くしていないあたしに高校に行く頭があるはずもない。勉強は好きではないし。


「高校に行かないって、じゃあどうするんだ?」

「働く。働いてひとりで暮らす。」

「やりたい仕事があるのか?」

「お金を稼げるならなんだっていい。コンビニでもキャバ嬢でも。」


センセイの顔がさっと曇る。見なかったことにして続ける。


「頭悪くて中卒だったら、そのくらいしか仕事ないでしょ。」


あたしはもう、お姫様になりたいと純粋に願える程幼くない。自分の置かれた状況や身の丈を過不足なく認識した上でしか将来を語れない。僅かな夢しか見られない、それも現実的な夢しか。