* * * * *
これからどうなるのだろう。センセイは本当に救世主になってくれるのか。児童相談所に通報すると何が起こるのか。
わからないことだらけなのに、不思議と不安は少ない。
窓から見える隣の病棟と木々。その隙間に見える梅雨の中晴れ、青い空。本気で飛び降りようとしたあの日の空と重なる。
昨夜のあたしはただ必死で生を乞うていた。無我夢中で死にたくないと、そればかりを願っていた。
いつ死んでも構わないと思っていた。地震とか事故とか通り魔に刺されるとか、命を失うことになってもたいして後悔しないだろう、黙って受け入れるだろう。そう漠然と考えていたのだ。
あたしは、本当は。生きたいのだろうか。しかし今でも、不慮の出来事で死ぬならそれはそれでいいと思う。ただ死因がアイツになるのが嫌なだけ。死に対して恐怖はない。両極端の気持ちが背中合わせに存在している。けれど、どちらも偽りではない。
夕方になってセンセイと中年の女性が病室にやって来た。その女性は児童相談所の者だと名乗った。
「病み上がりだから、詳しい話はまた後日ゆっくりな。」
そう言ったセンセイが教えてくれたのは、家に帰らなくていいということだった。
一時保護、という措置だそう。あたしの現状は身体の痣を見れば明白で、加えてあたしはもう自分の意思をはっきりと示せる十四歳。緊急時に保護が認められたのだ。
「家に帰りたいですか?」
センセイが説明する横でずっと黙っていた女性は、最後に一言だけ質問してきた。
「……帰りたくない。」
殴られて蹴られて虐げられて。そんな心が休まらない家に未練などない。
児童相談所がどのような場所かはいまいち不明だが、あの家と比べればどこだってマシだろう。そう思ったあたしはセンセイと女性に連れられて一時保護施設へと向かった。
始めて逃げ出した。解放されたのだ。連れ出してくれたのは、センセイだった。

