学校に行くからとセンセイは去って行った。ゆっくり部屋を見渡してみると、あたしがいるベッドでぱんぱんの狭い空間はカーテンのような仕切りで分けられていた。非常に殺風景で窓はない。壁に掛かっていた時計は六時半を指している。

七時頃にやって来た看護師に検温と点滴のチェックをされ、その後誘導されて大部屋に移った。どうやらさっきの場所は一時的に点滴の処置をするだけの場所だったようだ。

大部屋はドラマでよく見るような六人部屋で、あたしは入り口から見て右側の一番奥、つまり窓際のベッドをあてがわれた。薄い水色のカーテンで囲まれた空間。窓側の部分だけカーテンを開けて外の景色を覗かせた。

しばらく誰も来なかったので、ただぼんやりと景色を眺める。


* * * * *


「今から行くから。大丈夫だから。」


たすけて、と言ったあたしにセンセイはそう言った。力強い言葉に痛みがやわらいだ。


「誰にも、言わないで。」


アイツに見つからないように助かりたい。それしか頭になかった。


「お願い、アイツに言わないで。」


同じ言葉を繰り返していたように思う。アイツが誰か伝わりっこないのに。切羽詰まっていた。なりふり構っていられなかった。


「二十分で行くから。浮田、大丈夫だからな。待ってろ。」


電話を切って、財布と保険証を適当な鞄に詰めた。熱い身体の節々に痛みが生じてきて脂汗が浮かぶ。うつろになりそうな意識をなんとか保って外に出た。

しばらくして車で現れたセンセイ、救世主に見えた。そして後部座席に横になったところで意識が途切れた。