沈黙が空間を覆う。胸の熱さが引いていく。
センセイが再び話し出す。
「辛かったよな。」
「……。」
「何があったか、話してみないか。」
先程までの暴走した感情が手元に返ってくる。体調がおかしいと感情までおかしくなるみたい。
言葉にしたら、何かが変わるのだろうか。
もう、いいか。変わらないなら変わらないままの現状維持ということになるのだし。もともとそんな毎日だったのだ。だったら別に、センセイに言ったって。
「……父親。」
初めて、話す。一度冷えた身体の奥がじわじわと熱を持ち始める。
「あたしを殴ったり蹴ったりするのは、父親。」
あたしを守れるのはあたししかいないから誰かに言ったってどうにもならない。誰かに話したら、この地獄のような現実から逃避出来ることを期待してしまう。言葉にしたら、本当にそうなってしまう。言葉にしなかったら、暴力を振るわれているあたしはあたしの中に収まるけれど、外側に出したら。真実になってしまうようで。
たくさんの理由があったのに、真っ白な視界の中ではどこかに消え去ってしまった。言葉にしてみても予想した程の変化はなくて、無駄に構えていたことが空しく消える。
「うん。そうじゃないかと、少し思ってた。」
「で、だから何なの。」
天井を見上げたまま言う。今度はあたしの声が震えてしまう。

