目を開けたら、真っ先に飛び込んできたのは真っ白な天井だった。
時間の経過がわからない。頭がぼんやりしている。どうしてここにいるのだっけ。記憶が曖昧だ。
「起きたか。」
急に声がして、驚いて左の方を見るとセンセイがいた。スーツではなく、一度家に行った時に見た部屋着のような格好をしている。髪もぼさぼさだ。ついでに左腕に点滴が刺さっているのも認識する。
ゆっくり、頭が回り始める。
「今日は夕方までここで安静にするようにってさ。」
「あたし、何だったの。」
「風邪をこじらせたのと……。」
センセイは言いにくそうに顔を伏せると、傍にあった椅子に腰掛けた。そして再び真っ直ぐこっちを見た。
「外部から衝撃が加わって胃を損傷したのが原因じゃないかって。身体中に痣があったから。でもそんなに大きな怪我ではないから、点滴してしっかり休めば治るって。」
「うん。」
よかった、とりあえずアイツに命を奪われずに済んだようだ。
しかし、いつになく真剣な、切実なセンセイの表情から次にされる話を覚悟する。誰にも言うつもりはなかったけれど、医者にも見られているし、追究から逃げられるか。
センセイから目を逸らして真っ白な天井を見つめる。傷ひとつない真っ白。