朝目覚めたら、世界がまるごと終わっていますように。毎晩そう願いながら眠りにつく。

深夜一時頃帰宅したらアイツは寝ていた。長い間外にいたせいで雨の匂いが染み付いたのが嫌でそっとお風呂に入った。音には最大限気を遣っていたつもりだったのだけれど、上がったらアイツは起きていた。起こしてしまったようだ。


「今何時だと思ってるんだ!」

正面から左頬を平手打ち。引き攣るような痛み。

「迷惑ばっかりかけやがって!」

右によろけたところに、左耳付近を拳で殴られた。ふっとんで尻もちをついた。

「誰が食わしてやってるのか考えろ!」

せめてお腹は庇わなくては。と思う暇もなく、お腹のど真ん中を踏みつぶされた。物凄い圧力がかかる。内臓が押し出されて吐きそうになる。息が出来ない。苦しい。

「ふざけんな!」

もう一度鳩尾辺りに蹴り。苦しい。肺を握り潰されたよう。

なんとか身体を横向きに返して膝を胸に抱える。背中や肩を蹴られ続ける。肺が詰まって細切れの息。最後に頭を踏まれて、その足でアイツは寝室に戻って行った。十九発。

お腹が痛い。涙が出る。泣きたくないのに。アイツなんかに泣かされたくないのに。背中が痛い。肩が痛い。苦しい。泣きたくないのに、泣いてしまう。