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過去を振り返りながら随分遠くまで歩いてきた。雨に濡れた建物に月の光や街灯が反射して、町全体が僅かにきらきらきらめく。雨音が雑音を遮るせいでしんしんと静かだ。
毎日毎日歩いているから、周辺一帯の野良猫は見分けがつくようになった。裏道という裏道を知り尽くしたし、信号のタイミングとか人通りとか、あらゆることがわかるようになった。
治安のいいこの町は夜中歩くのにもってこいだ。
「ねーねー、何してんの?」
時々こういうこともあるけれど。
コンビニの前を通り過ぎようとしたとき、駐車場で傘をさして煙草を吸っている男に声をかけられた。派手な外見はいかにも田舎のヤンキーといった風貌。
「……。」
こういうのは無視するに限る。関わったところでロクなことにならない。
雨の日に傘をさしてまで外で煙草吸いたいか。家で吸えばいいでしょ。どうせそれがカッコイイとでも思っているのだろう。
こうやって声をかけてくる奴等に一番してはいけないのが、過剰に反応することだ。反応することが最も奴等を喜ばせる。無表情ですたすたと歩く。
「ねー、無視って冷たいじゃん。」
背後からびちゃびちゃと雨を弾く駆け足がして、逃げようとしたけれど。

