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ひとりになってからも、しばらく学校に通い続けた。
話しかけてくる人もいなかったけれど意地悪をされる等の被害も特になかったから、自分の殻に籠って全ての感情に蓋をして平常心を保った。声を発さない日々。話さなくなって気付いたのは、一つの器官を封じると他の器官に意識が集中するということだ。あたしの場合は耳で、クラスメイトの会話が研ぎ澄まされて聞こえるようになった。
人の噂も七十五日と言うけれど、好奇心旺盛な中学生の興味はそんなに継続しない。あんなに一気に広まったあたしの噂も、急速に飽きられた。どこで耳を澄ましても、あたしの名前は聞こえなかった。
忘れてしまったのだろう。面白いから飛びついて、飽きたからさようなら。その噂がどんな風に影響したのかを、あたしがひとりになったことを、大半の人は忘れてゆくのだろう。
こんなに痛手を負ったのに、話題に上ることももうない。どんな酷い言葉でもいい、罵られている方がまだマシだ。存在すら忘れられたような態度が一番辛い。
蓋をして蓋をして、ある日。
登校中に見上げた朝の空があまりにまっさらな、青だった。
「全部なくなっちゃえ。」
呟いた。途端に全てが陳腐で馬鹿馬鹿しいものにしか見えなくなった。
元来た道を引き返す。学校のすぐそばまで来ていたので、周りにいた中学生が逆流してゆくあたしを怪訝そうに眺めていた。そんなの気にならない。
一旦家に戻って近くのドラッグストアの開店時間まで時間を潰し、あるものを購入して昼休みに登校した。
ドアを開けたときの、同級生の顔と張りつめた空気が忘れられない。
教室にいた全員があたしの風貌に絶句していた。魔法がかかったように固まる人々。あたしはつかつかと教室の中ほどまで行き、周囲の机と椅子をあらかた蹴り飛ばした。今までの鬱憤を根こそぎ吐き出す。蹴る。蹴る。蹴る。
何回か蹴って、やっとあちこちで悲鳴が上がった。あの三人も部屋の隅で固まっている。
蹴る。蹴る。蹴り飛ばす。
十数回蹴って飽きたあたしは、そのまま教室を出た。随分すっきりした。この事件もすぐに噂になって、またすぐに忘れ去られるのだろう。馬鹿馬鹿しい。
この日が初めて金髪にした日だ。そして翌日から教室には行かずに保健室登校をしたりさぼったりするようになった。

