「北本先生も了承してくれているから、ちょっと食べちゃおうか。」


あたしがぼうっと思いを巡らせている間に、なぜか養護教諭の北本先生に許可を取っていたセンセイは、笑顔で内装のビニールを破りだした。童顔だから、笑うと余計に幼くなる。


「はい。」


差し出された箱から掴んだ三角は、ぷにぷにしていて餅みたいだ。中央には円く中身が透けている。餡子かな。


「…おいしい。」


薄緑色の生地から香る抹茶と甘すぎない餡子、柔らかくとろけるような口触り。イメージでしかないけれど、京都の風情がある気がする。

センセイは更ににこにこすると、ひとつ八ツ橋をつまんだ。


「自分も食べちゃうんだ。」

「小腹すいちゃってさ。」

「ふっ。」


思わず笑ってしまうくらい、センセイはおいしそうに八ツ橋を平らげた。スーツを着ていなければ教師には見えないだろう。


「三日間元気にしてたか。」

「普通。」

「少しは勉強とか。」

「めんどくさい。してない。」


こんなお土産、水曜日でもよかっただろうに。どうして今日だったのだろう。どうしてわざわざ。きっと疲れているのに。

僅かに室内に届く雨の音が、なんだな心地よい。


同じように、翌日もセンセイはやって来た。