始業式。青々と澄み渡る空、空に負けじと対抗するかのように咲き誇る桜の木々。どこもかしこもそわそわと浮かれていて気に食わない。

今日から中学三年生。

嬉しくもなんともない。学年が変わったところで何かが劇的に変わる訳ではない。またつまらない、灰色の毎日が待っているだけだ。新芽の淡い緑も、ぽつぽつと咲く蒲公英の黄色も、あたしの日常を彩ってはくれない。

嬉しいことや楽しいことは、いつだって手の届かないところで起きている。


世界がまるごと終わればいい。全部全部なくなっちゃえ。

明日なんて望んでない。未来なんかいらない。どうしていらないものを押し付けるのに、望むものは手に入らないの?

望んでいるのは、ただ、世界が終わることなのに。


「浮田。」


いつものように保健室でサボろうとしていたあたしを呼びに来たのは、大嫌いな昨年度の担任だ。脳みそが鉄筋コンクリート100%で出来ているかのような、頭のお堅い教師。頭ごなしの決めつけを得意とする汚い大人、とにかく大嫌い。


「なんでこんなところにいるんだ。」

「頭痛いから。なんか文句ある。」


嫌悪感が表情に出るのを止める気はない。むしろ積極的にそうしている。でも冷静さは失ってはならない。冷静で淡々としたガキほど、教師にとって苛立つものはないからだ。


「どうせまた仮病だろうが。ほら、行くぞ。」

「ほんとに頭痛いんだけど。」


もちろん嘘だ。気の弱い養護教諭は、いつもあたしに押し切られて体調不良を認めてくれるが、今は困ったように俯いてしまっている。


「誰がお前みたいな問題児の言うこと信じるか。いいから立て。」


問題児。不良。学校のお荷物。すべてあたしの代名詞だ。もう慣れた。