「……。」
涙が出た。
どうしてだかわからない。雫がはらはら頬を伝う。
何の変哲もないカレー。ちょっと甘い普通のカレー。カレーの温かさがじわじわ胃に染み込んで、涙になって出てくるよう。
「え、辛かった?」
「……違う。」
辛くないのに。悲しくも悔しくも痛くもないのに。何故泣いているのだろう。自分で自分の感情が掴めない。おかしくなってしまった。
「どうした?」
その言葉が優しく聞こえてしまって、涙がさらに溢れる。このカレーに涙薬でも混ぜられているんじゃないの。
「うるさい。」
放った声が自分でわかるくらい弱々しい。一体何が起こったのだ、あたしの涙腺。
センセイはにっこりと笑って、あとは黙ったままだった。
センセイとぽたぽた泣くあたしは、ただただ向かい合ってカレーを食べた。