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「ごめん、待ったか。」
静かにドアを開けて、センセイはようやくやって来た。
今日は約束通りセンセイの自宅に行く日だ。
「別に。」
いつものように黒いだけのスーツを着ているセンセイを、一瞥して外を見る。暑苦しいユニフォームを着た野球部が走って通り過ぎてゆく。誰ひとり顔を知らない。
あたしは何の一員なのだろう。
「今日は何してたんだ?」
「特に何も。」
センセイの方に再び視線を移す。
普段教室以外の場所で会っているせいで見慣れないけれど、センセイは毎朝毎夕この教室にいるのだ、と思ったら、さらに不思議な感じだ。ここでも能天気なセンセイぶりを発揮しているのだろうか。
「行こうか。」
言葉少ないままに切り出したセンセイ。黙って頷いた。

