それは、梅雨のさなかだった。
連日止む気配のない雨に誰しもうんざりしていたのだろう。あたしではなくてもよかったのかもしれない、単なる憂さ晴らしに過ぎなかったのかもしれない、悪気のない誰かの冗談が予想外に広まってしまっただけかもしれない。
それにしては、悪質だった。
『一年二組の浮田結乃は不良グループと付き合いがあって毎晩喧嘩をしている。』
何故そんな根も葉もない噂が立てられたのかはわからない。あたしは少々キツく見える顔立ちをしていて、それが一因だった可能性はあるけれど、真実は闇の中。
しかし、張本人の耳に入ってくるくらいだから、その噂は広範囲に知れ渡っていたのだろう。おそらく噂の伝わる速度も速かったはずだ。退屈な日常には格好のネタだ。あっという間に周囲に人がいなくなった。
特につるんでいた三人は、それでもしばらくは変わらず接しようと努めてくれていたけれど、あたしたちはそんなに大人ではなかった。
仲が良くて着替えの際も一緒にいるから、見えてしまうことがある。もう、嘘も限界だった。あたしは嘘が下手だった。身体の至るところに次々とできる痣の理由は不自然で、その痣が不運にも原因は噂の通りだと裏付ける結果を生んでしまった。
「結乃、ごめん。」
ある日の帰り際に三人揃って早口で、目を合わせずに、去った。
本当に不良と関わりがあると思われたのか、あたしと仲が良いせいで悪い噂の標的に加わってしまうことが怖かったのか、その両方か。
あたしは、ひとりになった。

