「うちの親塾行けってうるさいんだよね。部活も塾もってなったら、遊ぶ時間どころか寝る時間すらなくなるっつーの。だいたいまだ一年なのに受験受験って急ぎすぎ。」
「それはウザイね。うちの親なんて遊びに行くって言うと、どこに?誰と?何時に帰るの?って毎回聞いてくるよ。」
「私のとこはお姉ちゃんと比べられるな。お姉ちゃんが頭良くてさ、あんたもお姉ちゃんを見習いなさい、が最近の口癖だよ。嫌になっちゃう。」
周りの同級生の両親に対する愚痴と、あたしの不満は種類が違う。話に乗っかって「あたしは毎晩のように酔っ払った父親から殴る蹴るだよ。加えて罵詈雑言。」なんて言おうものなら、空気が凍りつくだろう。
だからあたしは親の愚痴大会が始まると、否定もせず共感もせず、贅沢な悩みだなと心の中で呟きながら友達の話に耳を傾けていた。それが誤解を生んだ。
「そういえば結乃から親の悪口って聞いたことない。」
「結乃のとこお父さんだけって言ってたけど、優しいお父さんなんだね。いいなあ。」
どう返したらいいかわからなかった。肯定はもちろん違うし、否定して真実を告げることも出来ない。あたしの逡巡を彼女らは肯定と受け取ったらしい。
「うちも結乃のお父さんみたいならいいのにな。」
全身が凍てつく台詞。
母親がいないことは隠し通せないだろうと思って、最初に打ち明けた。同情はされたけれど、このご時世離婚もそう珍しくないため、そんなに深く掘り下げられることはなかった。しかし父親については別だ。
普通の中学生でいたかった。片親でもきちんと面倒見てくれる親がいて、友達がいて、部活に入って。せめて表面だけでも、みんなと同じでいたかった。いられると思っていた。

