しくじった。


「どこ行ってたんだ。」


もうすぐ日付の変わる、深い夜。

部屋の明かりが付いていたのは外からでも確認出来たけれど、どうせまた電気を付けっ放しで寝ているのだろうと高を括ってしまった。戻ってくるのが早すぎた。


「どこだっていいでしょ。」


リビングのテーブルには発泡酒の空き缶が無造作に並んでいる。顔は赤い。相当呑んでいる。危険信号だ。

目を合わせないように俯く。逃げなきゃ。怖い。


「なんだその口の聞き方は。」

早く部屋に行かなければ。足早に歩く。リビングを横切らないとあたしの部屋には行けない。こんな家の構造を呪いたくなる。


「親を無視しようってのか!」


呂律の甘いドス声。カンッ。高い音。後頭部に軽い痛み。カラカラ。落ちた空き缶が転がる。

呼吸を止めて立ち止まる。始まる。怖い。


「だいたいお前には感謝の気持ちってモンがねえんだよ。」


アイツが立ち上がったのが気配で伝わる。しかし、振り向けない。

恐怖で足がすくむ。心臓が喉元までせり上がる。


「誰のおかげで生活出来ると思ってんだよ!」

来るーー。