童顔センセイが毎日家に来るようになって、もう十日になる。こんなに連続で学校をサボるのは久しぶりかもしれない。五月病かな、また四月だけど。

すっかり葉桜と化した桜の木を眺めながら、ぼんやりと、ただ、時間が経つのを待っていた。

太陽は南天付近、春らしい柔らかさを失いかけた日射しが降ってくる。溶けちゃえばいいのに、こんな身体。

昨晩は酷かった。珍しく肩から出血した。腹は痣というより黒々しく変色している。

中学のジャージに身を包み、本日もベランダで過ごすことにする。煙草はない。

綺麗なものはいつだって、人間の外側にあるから、だから、人工の建物から出来る限り外に出る。呼吸するために。


「浮田さん!」


しばらくして、また童顔スーツはやってきた。

二、三回前からチャイムを鳴らすことはせず、直接ベランダの下に回ってくるようになった。そのこなれた感が、むかつく。


「まだ学校、行く気ない?」


きゅっと上まで締まったネクタイ。ボタンのきちんと留まったスーツの上着。長すぎず短すぎずの黒髪。センセイの優等生みたいな、佇まい。

おそらく今は昼休みの時間帯だ。


「しつこい。」


やってられない、馬鹿馬鹿しいって気持ちを込めるだけ込めて、クールに吐き捨てる。


「浮田さんに、学校に来て欲しいんだ。」


センセイは言う。不意に、思い出す。

そうだ、あたしにはとっておきの武器があるじゃない。毎日毎日こうやって訪問されるのにも飽きたし、せっかくなら武器を使おうか。


「あたしに学校に来て欲しいのは、センセイとして?それとも、」