花散らしの雨。今朝の天気予報は大当たりで、午前十時を回った頃から叩きつけるような雨が降り始めた。
最近の日課がベランダに出て煙草を吸うことだったけれど、今日は無理だ。煙草ももうない。
煙草はよくアイツがその辺に放ってあるのをくすねて吸っている。だらしなくて家事を全くしないアイツはそのことに気付かない。昨日の収穫はなかった。
部屋干しした洗濯物の匂い。掃除機をかけたばかりのフローリングにごろんと寝転がる。冷蔵庫が空っぽだ。朝ごはんも食べていないし、お昼ごはんもないまま、もう一時を過ぎようとしている。こんな雨の中では買いに行くのが面倒だ。
インターホンが鳴った。
無視しよう。しばらく動きたくない。
「浮田さーん、沖田です。」
ドアを叩く音とともにしたのはセンセイの声。
あれから時間はまちまちながら毎日来ているセンセイ。今日も来た、雨なのに。いくら学校とここが歩いて五分かからないからって、物好きな奴。
「浮田さーん、いる?」
大声で恥ずかしい。ベランダの時点で迷惑だけれど、ドアの前に居座られるのはもっとうっとうしい。
重い四肢を引きずりながら立ち上がって玄関へ行く。