お金が稼げたらどんなにいいだろう。十四歳のあたしは、無力だ。
今はいい。とりあえずは水もガスも電気もある家があり、最低限のお金は与えられる。
だけどもし、といつも考える。この家を追い出されて途方に暮れるのは、そう有り得ないことではないのだ。いざとなったら身体を売るしかない。けれどもそれはしたくない。
あたしはバカな不良少女だ。学校はサボるし、金髪だし煙草も吸う、飲酒だってしたことある。
しかしそこまで堕ちたくはない。そこを越えてしまったら、何かが、正体不明の大きな何かが、きっと、決定的に崩れ落ちる。
だから貯金をするしかない。命懸けの貯金を。
日付が変わる頃家に戻ると、アイツは電気を付けたままで、背広も脱がずにリビングで爆睡していた。テーブルにはビールの空き缶が散乱している。ぐうぐう。うるさい鼾が耳につく。
そろり。足を忍ばせる。
ぐわり、と急にアイツが身を翻した。咄嗟に逃げる体勢を取る。が、単に寝返りをうっただけだったらしく起きる気配はない。
焦った。急上昇した心拍数を下げるために、深く息を吐く。
なんて悲しいのだろう。もうあたしはアイツに恐怖と憎悪と小さな小さな同情しか抱けない。こんなことをしても罪悪感などない。
なんて、可哀想なのだろう。