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「あ、雨。」
英語を終え、休憩を挟んで数学に突入した頃。空がどんよりと鉛色に変わっていった。そして午後四時半過ぎ、ついに夕立が降り始めた。
「これじゃあ今日は走れないな。」
雨はみるみるうちに激しさを増す。ごうごうと雷まで鳴り始めた。
センセイが慌てて窓を閉める。叩きつけるような横殴りの雨が窓にぶつかり、雨水がするする流れてゆく。ざあざあと雨音が室内に響く。
「……センセイ。」
「ん?」
「もしあたしが受験はしないって決めたら、どうする?」
この二人きりの夏期講習はとりあえずで始めたものだ。センセイは高校に行って欲しいとは言ったけれど、最終的にはあたしが自分で決めたらいいとも言った。
未だ決められずにいる。だいぶ逸れてしまったあたしの学校生活は、もう取り返しのつかないところまで来てしまったのではないか。それに高校に行きたいという気持ちにはならない。学費の心配がなくなるとしても、アイツとの間に繋がりが残ってしまうことが気に障る。
「残念だけど、本当に浮田がそうしたいなら応援するよ。あ、でもキャバクラは止めて欲しいかな。」
「キャバクラ?」
「前に言ってたじゃないか。コンビニでもキャバクラでも何でもいいから働きたいって。水商売に真剣に取り組んでいる人がいるのもわかるけど、浮田には出来るだけそういう世界には入って欲しくない。」
本気にしてたんだ。適当に言っただけなのに。
その時、キャバ嬢だろうかなんだろうが働ければいいと考えていたのは事実だが。だってあたしには才能も特技もない。

