窓辺に立つ。暑い。校庭で部活に励む陸上部が見えた。二人ずつ五十メートルを走って記録しているようだ。皆本気だ。散る汗が手に取るよう。

ああやって、目の前のことに打ち込むのって、悪くないな。余計な思考をしないで、ひたすら。


「何見てるんだ?」


センセイが部屋に戻ってきた。宮野さんが持たせてくれたスポーツドリンクは、センセイが職員室の冷蔵庫で冷やしておいてくれた。それを手渡された。


「別に。ちょっと校庭見てただけ。」


一口飲む。爽やかな甘さが身体の中に染み渡る。


「陸上部か。うちの陸上部は強いから、練習も大変だろうなあ。」


センセイもお茶を飲んでいる。相変わらずのスーツ姿で隣に立った。センセイは背が高い方ではない。あたしの目線はセンセイの顎辺りになる。


「センセイって何部だった?」

「高一まで野球部。少年野球からずっとやってたんだけど、肩を壊して泣く泣く辞めることになってさ。」


はっとセンセイの方を見た。穏やかな口調。でもその内容に言葉が出ない。