「あたし、もうあの家には帰らないよ。」
真っ青な空を見上げて言った。まあるい雲がぽつぽつと浮かぶ、どこまでも青い空。
「それは、浮田が決めたらいい。昨日はそういう話をしに行ったんじゃないんだ。」
響き続ける子どもの声。無邪気さは無敵だ。
「高校の件で話をしてきた。もし浮田が高校に行きたいと言ったら、その費用を出して貰えるように交渉してきたんだ。」
「高校行くって決めた訳じゃ。」
「もしも、だ。学費は出すと約束してくれたから、障害はなくなった。最終的には浮田が行きたいかどうかで決めればいい。まだ時間はたっぷりある。」
センセイの言葉が空に溶けてゆく。急に、金髪にした過去の自分が馬鹿馬鹿しく思えた。青い空に似合う金色は、太陽だけだ。
ヨーヨーを買いに来る人がひとりも来ない。人気のない色しか残っていないからかもしれない。園庭にはカラフルが溢れていて、その中にヨーヨーもたくさんある。
「ゆのちゃーん、しんちゃーん。」
利乃ちゃんが駆けてきた。両手足を振り乱してぱたぱたと走る姿は生命力の権化のようだ。美しくて、尊い。
「いっぱいうれてる!」
はしゃぐ女の子が何かを決められる日は、いつ訪れるのだろう。