「店番いいよ、あたしやる。」
「利乃ちゃん戻ってくるまで代わりだ。」
「全然かわいくないから代わりになってないよ。」
「そりゃそうだ。」
軽口を叩くと、センセイは声を上げて笑った。
背中を汗が伝う。プルトップを捻ってソーダを一気に喉へ流し込んだ。
「昨日、浮田のお父さんに会って来た。」
「……へえ。」
家を離れて一ヶ月が経つ。意識的に過去は思い起こさないようにしていた。考えたっていいことなんた何にもない。
「結構お酒飲んでいたみたいだけど、普通に話してくれたよ。結乃さんは元気です、って言ったら、そうですか、って。」
「あ、そう。」
憎いあの顔が蘇る。あたしを執拗に殴った拳、踏みつけた足、切り裂く言葉を吐いた口。
こうして一度離れてみて、あの家がどれだけ異常だったか、改めて認識した。きっと幾分かは麻痺していたように思う。暴力の対象になることへの違和感が薄れていたのだ。

