「岩石みたいにぐしゃぐしゃな顔だけど、
それ以上にあたしには、千早ちゃんがつらそうにしてるように見えるの」
「うん」
「あたし、いつも通りのそのままの千早ちゃんが好きだから。それだけは覚えてて」
「うん、ありがとう。わたしも茜ちゃんが大好きだよ」
失ったモノより、得たモノの方が大きいと思ってしまうわたしはバカなのかなあ。
陸からの“好き”も欲しいけど、
茜ちゃんからの“好き”も同じように嬉しいの。
茜ちゃんは女の子なのにね。
なぜか、ふたつの“好き”は別に考えられないんだよ。
わたしの“好き”が少しでも伝わればいいなと思って、茜ちゃんの手をキュッと握ると
茜ちゃんもさっきよりも温かくなった手で握り返してくれた。
「わたしが男だったら、迷わず茜ちゃんを好きになってたと思うよ」
「千早ちゃん、ばかなこと何言ってんの?」
「そ、そーですよね。あは」
相変わらずの当たりの強いお姫様だけど、いつまでも、茜ちゃんのそばにいたい。
心から、そう思うよ。