「モモ先輩たちは大丈夫なの?」
「うん。先輩のバンドさ、チョー仲良しだから一緒にいにくくて。
だから、送る」
「いいの?」
「遠慮すんなよ。まあ、傘が一本しかないから俺と相合い傘だよ?」
「………」
紳士は撤回させてください。
ええ。今すぐに。
変態の部分だけは残してあげよう。
「…よろしくお願いします」
「ん。それでよろしい」
そう言って雨森が広げた傘は、分厚い雨雲を吹き飛ばしてくれそうな真っ赤な傘だった。
骨には色が入っていて、ちょっとここらでは見ない傘だった。
彼らしい、個性的な傘だった。
時々肩がぶつかったけど、
平気だったのは何でだろうか──。