「フワァァ、はよ~」
「おはよ、雨森(あめのもり)」
これでもか! と口を大きく開いてあくびをしながら教室に入ってきたのは
隣の席の、雨森セン。
左耳にある2つのピアスが、今日も輝いている。
首には真っ赤なヘッドフォン。
どんな曲を聞いているのかな。
軽音部でギターを掻き鳴らす彼のことだから、
きっと個性的な曲を聞いているのだろうな。
「また髪色変えた?」
「おー、よくわかったな!」
「そりゃわかりまっせ。そんな派手に色が変われば…」
「そうか?」
そう言って自分の長い前髪からをひと束取ってじっと見つめた。
おいおいおいおい。
隣の席の人の髪色が、
黒から茶色になって
気づかないわけがないって。
逆に気づかなきゃおかしいって!
少し前に「時代は黒髪だ!」とか言って、真っ黒にしてたの、
わたしはちゃーんと覚えているんだから。