「大丈夫だよ、茜ちゃん。茜ちゃんの好きな人もわかってくれるよ」
「チッ。…そっちかよ」
ムキー! 舌打ち! そっちってどっちよ!
「千早ちゃん。このことは、くれぐれも口外しないようにね」
「は、はひっ」
茜ちゃんは口こそ笑っていたが、目は笑っていなかった。
こ、怖いっっ!
「もし口外したら…。わかってるよね?」
彼女が動揺を見せたのはほんの一瞬で。
わたしが握るはずだった弱みは、なぜか逆に握られることに。
──この左耳のピアスホールが、わたしの乙女街道に大きく関わっていたとわかるのは、もう少し先のお話です。