それもその殿方は、陸上強豪校の北都(ほくと)高校の3年生、対馬 健(つしまたける)先輩。
夏のインターハイでは全国4位の将来有望株。
すでに推薦で有名大学への進学が決まっている、スーパーエリート。
合同練習で彼の走りを見てから密かに憧れ続けていた、そんな雲の上の人のような存在。
そんな彼がなぜわたしに?
「アレルギーの反応はでる人なんだよね?」
「…うん、多分」
反応が出るか出ないかで相手を選ぶわけじゃないけど、命に関わることだから譲れないのだ。
「まー、千早ちゃん、最近雰囲気変わったもんね。今だってお化粧してるし」
「ちょこーっとね」
せっかく茜ちゃんに教えてもらったメイク。
陸に会える学校でメイクをしないわけにはいかないもん。
だから教えてもらったメイクをアレンジして、ナチュラルメイクをしているの。
本当に軽く。
朝練が終わったあとにパパッと済ませるの。
校則がゆるいとはいえ、あのメイクは学校ではできない。