「キスさせてくれないと、ロリータのお洋服は着せてあげられないよ?」
「おうふ…」
せっかく頑張ったのにそれが着られないのは痛いよなぁ。
茜ちゃんに『お姫様はふたりもいらない』って言われちゃったけど、わたしだってお姫様になりたいもん。
「わ、わかったから。唇は無理だけど、ほっぺ10回じゃ…ダメ?」
「チッ」
舌打ち!? 舌打ちしちゃう!?
これでも譲歩したんですけど!
「誘ったのは千早ちゃんだからね? 絶対千早ちゃんの腰抜かしてやるんだから」
「ヒッ」
お姫様なんてとんでもない。そんなの見た目だけ。
お姫様みたいな甘さのカケラもない。
鞭を持った女王様を通り越して、悪魔にしか見えない茜ちゃんを前に、わたしは鳥肌を立てることしかできなかった。